
読書系YouTuberの方のお勧めがきっかけで図書館で借りてきた一冊。自分では絶対手に取らない装丁で、最後まで読めるか不安だった読み始め。
最初は自転車ロードレースに賭ける人々の人間模様や、レースの行方が中心のスポーツ小説なのかなあと思っていたら、途中から徐々に様子が変わりだし、ミステリー?みたいな雰囲気になったり少し恋愛も絡んできたりと一体どんな話になるのか予想もつかなくてページをめくる手がスピードアップ。結局3日ほどで読了してしまった。
今までスポーツというと試合内容もさることながらやっぱり最後は勝敗がメインに扱われて、結果が全てみたいな風に感じていたけど今回取り上げられているロードレースはそれだけではないスポーツなんだなという風に感じた。ロードレースはチームのエースを勝たせるためにチームメイトに一人一人に役割があり作戦があり個々の勝敗は二の次でエースの勝利はチームメイトのアシストなしでは成り立たない。言わばチームはエースのためにあるということ。アシスト役はエースの体力を温存させるために身を挺することが求められる。目立ちはしないが、自分の役割をきちんと果たすことでアシスト役として評価もされる。そういうところもロードレースの魅力である。
そうしてアシストしてもらったエースは徹底的に勝利にこだわらなければならない。他人の背中を踏み台にして勝つ人間には責任とプレッシャーがあるということ。それを背負う覚悟が必要であるということを感じた。ときに非常に感じる判断でも勝利のためにはそれを選ばねば、今までアシストしてくれた人のことを裏切ることになる。
今回この本を読んでロードレースの奥深さを感じた。ただの勝敗だけではなくパッと見ではわからない駆け引きやチームプレイ。
また、ロードレースというスポーツは少し子育てにも通じる所があるようにも感じた。一般的に子供を育てるために親は長い時間をかけて身体的にも精神的にも金銭的にもサポートする。ロードレースと違ってアシスト役の親の勝敗は無いけどそうやってサポートした末に子供は親から巣立っていく。ロードレースで言えばエースが勝つ。親はその姿を見て嬉しいような寂しいような…。
スポーツをする上で自分がエースではないことは悔しいし、辛いし他人のアシストなんてやりがいを感じられるのだろうかと思ったけどアシストしたエースがどんどん強くなっていくことに喜びを感じるというのは子供が親元から巣立っていく感覚に置き換えると何となく理解できるような気がした。
そして今回学んだこと、もう一つ。
エースの石井さんの言動、エースであるための覚悟が随所に散りばめられていて俺がエースだ!っていう主張が強いなとちょっと引くぐらいだったけど、実はそうじゃなかった。自分のことだけを考えての行動ではなかった。それが後半明らかになるところは号泣してしまった。
石井さんの表面的な言動だけを見て判断するのではなく、物事を一つの角度から判断するのではなく色々な角度から自分の目で見てから判断するようにしないと物を見誤るということ。ひとつの方向から物事を捉えたのであれば反対の方向からも物事を見てみることが大事だということを感じた。
そしてラストは、ミステリーから感動のラストシーンへと展開。結局最後も泣いてしまいました😂。
ロードレースに詳しくない方でもとっても楽しめる作品です。自信を持ってお勧めできる一冊です!
そしてこの作品はシリーズ作になっていて2024年7月現在本作を含めて5冊のシリーズ作品となっているようです。次作も絶対読みます!
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